「ぼくのおかあさんは、今年で七回忌です」
胸がひやりとした。
胸がひやりとした。
どもりながらつっかえながらのDくんの話しの要旨はこうだ。
「お母さんは、体が弱かった。けれども、おとうさんは
いつも、おかあさんを殴っていました。
ぼくは、まだ小さかったから、
おかあさんを守ってあげることができませんでした。
おかあさんは亡くなる前に、病院でぼくにこう言ってくれました。
{つらくなったら、空を見てね。
{つらくなったら、空を見てね。
わたしはきっと、そこにいるから}
ぼくは、おかあさんのことを思って、
おかあさんの気持ちになって、この詩を書きました」
胸がいっぱいになって、
涙を堪える(こらえる)のがやっとだった。
たった一行の詩の向こう側に、こんな物語があったなんて。
寮 美千子 「あふれでたのはやさしさだった」 より
西日本出版社 刊