2018/02/10

本当の瞬間

先日、岐阜別院で聞かせてもらった先生のお話から

思い出したこと。

母方の祖父が亡くなる直前のことです。

人が亡くなる前の様子を知らなかった私は、

病院のベッドで寝ている祖父を見ても、

「しんどそうに息してるな」

と思うくらいでした。

病室には、おひとりの門徒(檀家)さんも一緒におられました。

そのうち、祖父とその門徒さんと私の

3人だけになるという時間がありました。

顎で荒く息をしている祖父を見て、その門徒さんは

「もう、すぐかもしれませんね。足をさすってあげましょ」

と言われました。

そういえばおじいちゃんの足をさすってあげたことなんて

無かった。

寝間着の足元をめくると、象のようにざらざらとして

黒くなった足。

驚いて一瞬手が止まりました。

でもその門徒さんは、何のためらいもなく、

足をさすり始めます。

私も慌ててもう片方の足をさすり始めました。

この感触とためらいを忘れることはないと思います。

しばらくするとその門徒さんが

「にょ~らぁいーだーいーひぃの、おーんどぉくーは~」

と、恩徳讃(おんどくさん=*注)を歌い始められました。

静かな病室にあるのは、恩徳讃の歌声と足をさする音と、

大きな息の音。

するとその方は

「あなたも小さいころから歌ってきたでしょ。

一緒に歌いましょう」

と言われました。

んなところなのに恥ずかしさが出て、

また一瞬のためらいがあったことを覚えています。

そして私も一緒に何度も恩徳讃を歌いました。

しばらくすると看護師さんと家族が入って来て、

病室の雰囲気は変わりました。

この間どれだけ時間がたったのか分かりませんが、

私には、濃すぎるくらい密度の濃い時間、

本当の瞬間でした。

まわりの全部が、「そのまま」で、ごまかしがきかなくて、

私に教えてくれているものが詰まりすぎていました。

この時間を思い出すと、本当に複雑な気持ちになります。

同時に、こんな経験をさせてもらえて本当にありがたいな、

と心から思います。

「仏さまのはたらき」としか言えないくらい、

飾った自分なんてどこかへ吹き飛んでしまう、本当の瞬間。

怖いくらい迫力がある、いのちの時間。

他人事だったらこうは思わないです。

だからお葬式や法事をするんだ、と教えられた気がします。

あなたは、どんな本当の瞬間をお持ちですか。



*恩徳讃(おんどくさん)・・・親鸞聖人が阿弥陀如来の
徳をたたえるためにつくられた、和讃(わさん)の中で
代表的なもの。五・七・五で詠まれている。